資本主義モデルの危機

 人が生きるには枠組みが必要です。枠組みはキリスト教やイスラム教のような宗教であったり、資本主義や共産主義、国家主義などの体制であったりします。
 人々は枠組みの示す価値観に沿って、生きる目的を見出します。
 資本主義という体制は、現代で最も力を持つ枠組みです。今や世界を動かす原動力であり、人々が活動する意味を与えています。これは世界の安定に大きく寄与しています。
 しかし、資本主義は内在的性質と時代の変化により存続の危機にあります。
 経済成長という目的を与えてくれる資本主義が失われたら、社会をどのように安定させ、何を拠り所として生きてい行けばよいのでしょうか。
 我々は分岐点におり、今、考えなくてはいけません。
 資本主義は崩壊するのか、または、変化し存続するのか。
 資本主義が崩壊するならば、我々はどうすればよいのか。何ができるのか。
 まずは、資本主義というものを見つめなおすことから始めます。

 

資本主義とは

 資本主義は、経済体制の一種です。

 資本主義の純粋な意味は、資本家が自らの財産を増やすことを目的として、労働力を含めたあらゆるものを商品(資本)とみなして、売り買いすることで経済を回していこうとするシステムを指します。

 資本主義は、他の経済体制の要素を取り入れたり、政治体制と結びつくことで、修正と発展経て、現代の資本主義のような形になりました。

 

資本主義と自由市場

 資本主義は自由市場を基盤とします。

 自由市場は、物の売り買いが自由に行われることで、物の価格を、買い手の買いたい気持ち(需要)と売り手が売りに出す量(供給)のバランスに任せることを意味します。

 価格は、仕入れた値段より高く設定することが多いため、売り買いの数が多くなるほど、市場にあるお金の合計が増えます。

 これが市場の拡大です。

 

資本主義と民主主義

 現代の資本主義は、民主主義と強い結びつきを持っています。

 資本主義は、自由市場を奨励します。自由市場では、買い手と売り手が重要な役割を持ちます。

 より多くの買い手と売り手が存在し、またそれぞれがより裕福であるほうが、物の種類や、取引の数が増え、市場は活発になり、市場が大きくなります。

 民主主義は、国民全体に財産を持つ権利を与えるので、自由市場の担い手として役割を果たします。

 このため、資本主義を採用する国の多くは、民主主義を採用します。

 

資本主義と経済成長

 資本主義体制は、経済成長を続けなければなりません。

 資本主義は自由市場を基盤としています。

 そして、自由市場は、売り手と買い手によって形作られます。

 売り手と買い手は、自分の財産を増やすことを目指します。

 もし、市場の全体のお金が増えないのに、売り手と買い手の数が増えたら、各人の取り分は減ります。

 時々、一部の人の財産が増える場合もありますが、そのほかの人の財産は減少します。

 このような中では、自分の財産が増えないので、貧しくなっていき、生活ができなくなります。

 このような理由により、資本主義は、経済成長をずっと続けて、市場全体の財産の量を増やしつづけなければなりません。

 

経済成長と犠牲

 経済成長は、人間の生活を豊かにしていきます。その分だけ環境を破壊します。

 これからもそうあるとは限りませんが、これまでは、経済成長に伴って、大気・土壌・河川・海洋が汚染され、地球温暖化が進行し、生態系が崩壊し、動物が搾取されてきました。

 今までは人間が幸せならよいと見て見ぬふりができたのですが、環境破壊の度合いが大きくなりすぎたため、人間の生存すら脅かされてきています。

 それでも、資本主義は、経済成長をやめることができません。経済成長をやめることは資本主義の死を意味するからです。

 

資本主義と成員

 資本主義は、自由市場の成員である買い手が需要の担い手、売り手が供給の担い手であれば、機能します。

 現在は買い手と売り手は人間であるため、資本主義の主役は人間です。

 しかし、将来、買い手と売り手がロボット(AI)になったならばどうでしょうか。

 資本主義は、人間のものではなくなります。

 需要とは、人間の欲求から生まれるのだから、需要の形成を担う買い手は、人間にしか担えないと考えることもできます。

 しかし、現代の自由市場の最大の市場の一つである株式市場を見てみると、すでに買い手と売り手の両方をAIが担っています。

こうなると、資本主義という経済体制に人間が全く不要となる可能性も考えなくてはいけなくなります

 

資本主義の限界

 資本主義は、純粋に経済成長のみを目指し、その成員が、売り手と買い手としての機能を果たし続ける限りは、世界を回す力を持ちます。

 しかし、これ以上、いままでの形で経済成長のみを目指せば、環境はより破壊され、人間と生物の生存圏はどんどん狭くなっていきます。

 さらに、売り手と買い手が人間で無くなれば、資本主義に人間は不要になり、その居場所はなくなります。

 居場所を失った人間はどうすればよいのでしょうか。

 人間を必要とする枠組み、次の資本主義を見つけるのでしょうか。

 しかし、そう簡単に人間のみが持つ特性を不可欠とし、人間に存在意義を持たせてくれる枠組みが見つかるでしょうか。

  

  

【tips】

  • 資本主義は、試練の時にある。場合によっては、資本主義が崩壊してしまう可能性もある。
  • 資本主義が崩壊したら、それを生存や存在の基盤としている人や社会に混乱が生じる。
  • そのような状態になる前に、資本主義自体と資本主義が及ぼす影響について、考えるべき。
  • そして、それを資本主義の次なる事態、ポスト資本主義について考えることに繋げていくべき。
  •